心が痛い

ウチのクレーン整備士が作業中にケツを強打し、尾てい骨にヒビが入った。しかし、多少の痛みはあるものの作業するぶんには支障が無いらしく、暑い中、汗まみれになって業務に励んでくれている。
まさに社員の鑑だ。事務所の女子社員たちも彼のことを褒めまくっている。
曰く「骨にヒビが入ってるのにクレーンの上に乗って作業するなんて凄いよね」
曰く「根性あるよねぇ」などなど。
彼の好感度はうなぎ登りだ。
さはさりながら、ケツ痛の先駆者であるワシへの風当たりが強く冷たいものになっている。彼のケツの骨にヒビが入った日(以後、ヒビの日と表記)以前は、ワシが「痛い。痛い。ケツが痛い。ケツが痛いから、代わりにコピー用紙補充してくれんか?」と言うと、「大丈夫ですか?そんなこと私がやりますから無理しないで下さいね。(はあと)」などと、それはそれは優しい言葉をかけてくれたものだが、ヒビの日以後、ワシがいくら「痛い。痛い。ケツが痛い」と言ってもスルーされ、顔を背けられ、時にはA4のコピー用紙を1束投げつけられるようになってしまった。恐らく女子社員たちの脳内では
 
クレーンの彼=ケツの骨のヒビなど、ものともせず、ひたすら業務に励むクレーン王子は神社員!
わし=ケツの骨にヒビも入っておらず、そんなに痛くないはずなのに、ひたすら「痛い。痛い」と泣き言をたれ、同情を買い、自分の仕事を減らそうとする糞野郎は塩!

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という構図が完成しているのだろう。ことほど左様に女というものは単純で短絡的な生き物なのだ。お前たちは知らんだろうが、ワシも本当に痛いのだ。考えてもみろ。ワシはクレーン王子の倍も生きているんだ。人間工学的にも運動生理学的にも、わしのケツの強度はクレーン王子の半分しかないだろう。長年の不摂生不道徳猥褻怠惰な生き方によって痛みに対する耐性も衰えている。「んじゃ、お前自身の責任じゃねーかよっ!」とツっこみたくなる向きもあろうが、それは間違いだ。わしの不摂生不道徳猥褻怠惰な生き方はこの国と社会のせいなのだ。弾けたバブルとリーマンショックのせいなのだ。
ともあれ、ヒビの日以来、ケツよりも心が痛い。

ソルティ・ライフ

同業者の会合を終え、いつもの店に転がり込む。息子が二十歳になった時、酒の飲み方を教えた店だ。
その後、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる方面の職業に就いた息子は、単独またはJGSDFの仲間とちょくちょく飲みに来ているらしい。
いつものようにソルティドッグを注文し、「ところでウチの坊主はいつも何を飲んでる?」とマスターに尋ねる。

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マスター「いつもアードベッグやね。シングルモルト一本槍やね。ボウモアも好きみたいやな」

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わし「え!アードベッグってか。アイラモルトやん。美味いけど高い酒やん。生意気やん。わし、いつもソルティドッグやん。しょっぱい酒やん。まさしく塩やん。アードベッグは神やん。神モルトやん。アードベッグソルティドッグ。最後の二文字しかかぶってへんやん。値段は倍くらい違うやん。一気に酒が不味くなったやん」
など島田紳助風に愚痴るわしにマスターが追い打ちをかける。
マスター「そういえばこの前、べっぴんさんと一緒に来たよ。別の日にも違う美人と来とったけどな。あれはエエ男やからモテるな」
わし「あ。そんな情報はいりません。息子ではなく目の前にいるわしの人格とか容姿とか財力とか、なんでもいいから全力で褒めなさい」
マスター「そうやなあ……けど、息子のほうがはるかに出来がエエからのぅ……」
と、つぶやきながら厨房方面に去っていった。
チッ!

コーモン見えても肛門は強いのだ


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あのね。ケツが痛いんです。ええ、激しく痛いんです。
あ、肛門じゃありません。私、肛門は強いじゃないですかぁ。
尾てい骨なんですよ、痛いのは。
先々週、長時間の会合があって、ずーっと座りっぱなしだったんですよ。その翌日から痛みだしましてね……
歳も歳だからコツショショウショウ、あ、噛んだ。コツソショウショウとか心配だったんで、病院に行ってレントゲンとか撮ったりしたんですが、ヒビとか骨折とかは無かったんですよ。
んで、塗り薬を出されて毎日ケツの割れ目に塗ってます。
患部は限りなくコーモンに近い場所なので、自分で塗るのもアレだな-。と思いましてね。社会的地位とか戸主の威厳とか考えるじゃないですかぁ。パンツの前から手を突っ込んでも、後ろから突っ込んでも、あるいは下半身すっぽんぽんになって塗ったとしても、その姿はやはり美しくないじゃないですかぁ。昭和の男としての矜持がそれ許さないじゃないですかぁ。
で、長年連れ添った糟糠の妻に「すまぬがケツに薬を塗ってくれ」と戸主としての威厳を1ミリたりとも損なわぬ声で伝えると、「無理無理無理」と食い気味、かつキレ気味に拒否られました。
私ってケツは結構キレイじゃないですかぁ。だから少し凹みました。
そうそう、ドーナッツ型クッションを買いましたよ。しかも経済力のある私は3個も大人買いをしたのです。。会社用・自宅用・クルマ用。ちなみにクルマ用は会議や飲み会にも持って行きます。キャバクラではかなりの確率でウケます。痔疑惑を否定するところから私のコーモンの強度へ話を展開して笑わせます。ヒィヒィ言わせます。あ。話を戻します。
買った時は「これ会社へ持って行ったら、痔とか思われるんだろうな…」と少しブルーになりました。
いや、決して
健康な人>尾てい骨痛の人>露出狂の人>舛添要一>痔の人
などというヒエラルキーを信奉しているわけじゃありません。
痔=あっ!この人コーモンに自分の指で薬を塗っている人なんだぁ。凄いなぁ。メンタル強いなぁ…とかいう目で見られるのが嫌なだけです。
あれ?結果的には痔の人をディスってしまいましたね。
さて、案の定、初めて会社に持って行った日、3人の女子社員から
「痔ですかぁ?」
「キレ痔ですか?イボ痔ですか?脱肛ですかぁ?」
「変な物突っ込んだんですかぁ?」
と聞かれました。想定内の質問です。
「痔じゃないっす。だって私コーモン強いじゃないですかぁ。あ、強いから何でも突っ込めるって意味じゃないよ。尾てい骨が痛いのです」と速効応えましたよ。
彼女たちからは「あなたのコーモン強度についての情報は要りません。訴えますよ…」と半笑いで諭されました。
 
(おしまい)

鬼の首を獲る

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今日、会社の若い子が、得意先の担当者から電話でミスを叱責されていた。

彼女は電話を切った後「鬼の首を獲ったようにコチラのミスを言い立てられた」と愚痴った。

鬼の首を獲る...文章では目にするけど、実際に人が口にするのを聞くのは久しぶりだ。

なんだか笑えた。

鬼の首を獲って得意になっている人を実際に目の当たりにしたら、100パー引きますから。しかも鬼の首を獲ってもそんなに偉くないですから。

て言うか、鬼なんか見つけようものなら、速攻アメリカからミスター ジョーンズみたいなサングラスの男が飛んできて、エリア51とかに連れて行きます。

もう細心の注意を払って保護すべき対象ですから。レッドデータブック絶滅危惧種どこじゃありませんから。

そんな大切な鬼様の首なんか獲った日には切腹ものですから。ましてや得意げになどしようものならネットで大炎上必至ですから。

て、ゆーわけで、もう慣用句として成立してないんじゃねーの。とか思った次第です。