ソルティ・ライフ

同業者の会合を終え、いつもの店に転がり込む。息子が二十歳になった時、酒の飲み方を教えた店だ。
その後、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる方面の職業に就いた息子は、単独またはJGSDFの仲間とちょくちょく飲みに来ているらしい。
いつものようにソルティドッグを注文し、「ところでウチの坊主はいつも何を飲んでる?」とマスターに尋ねる。

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マスター「いつもアードベッグやね。シングルモルト一本槍やね。ボウモアも好きみたいやな」

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わし「え!アードベッグってか。アイラモルトやん。美味いけど高い酒やん。生意気やん。わし、いつもソルティドッグやん。しょっぱい酒やん。まさしく塩やん。アードベッグは神やん。神モルトやん。アードベッグソルティドッグ。最後の二文字しかかぶってへんやん。値段は倍くらい違うやん。一気に酒が不味くなったやん」
など島田紳助風に愚痴るわしにマスターが追い打ちをかける。
マスター「そういえばこの前、べっぴんさんと一緒に来たよ。別の日にも違う美人と来とったけどな。あれはエエ男やからモテるな」
わし「あ。そんな情報はいりません。息子ではなく目の前にいるわしの人格とか容姿とか財力とか、なんでもいいから全力で褒めなさい」
マスター「そうやなあ……けど、息子のほうがはるかに出来がエエからのぅ……」
と、つぶやきながら厨房方面に去っていった。
チッ!