心が痛い

ウチのクレーン整備士が作業中にケツを強打し、尾てい骨にヒビが入った。しかし、多少の痛みはあるものの作業するぶんには支障が無いらしく、暑い中、汗まみれになって業務に励んでくれている。
まさに社員の鑑だ。事務所の女子社員たちも彼のことを褒めまくっている。
曰く「骨にヒビが入ってるのにクレーンの上に乗って作業するなんて凄いよね」
曰く「根性あるよねぇ」などなど。
彼の好感度はうなぎ登りだ。
さはさりながら、ケツ痛の先駆者であるワシへの風当たりが強く冷たいものになっている。彼のケツの骨にヒビが入った日(以後、ヒビの日と表記)以前は、ワシが「痛い。痛い。ケツが痛い。ケツが痛いから、代わりにコピー用紙補充してくれんか?」と言うと、「大丈夫ですか?そんなこと私がやりますから無理しないで下さいね。(はあと)」などと、それはそれは優しい言葉をかけてくれたものだが、ヒビの日以後、ワシがいくら「痛い。痛い。ケツが痛い」と言ってもスルーされ、顔を背けられ、時にはA4のコピー用紙を1束投げつけられるようになってしまった。恐らく女子社員たちの脳内では
 
クレーンの彼=ケツの骨のヒビなど、ものともせず、ひたすら業務に励むクレーン王子は神社員!
わし=ケツの骨にヒビも入っておらず、そんなに痛くないはずなのに、ひたすら「痛い。痛い」と泣き言をたれ、同情を買い、自分の仕事を減らそうとする糞野郎は塩!

f:id:DjangoTakatora:20160715151433j:plain

という構図が完成しているのだろう。ことほど左様に女というものは単純で短絡的な生き物なのだ。お前たちは知らんだろうが、ワシも本当に痛いのだ。考えてもみろ。ワシはクレーン王子の倍も生きているんだ。人間工学的にも運動生理学的にも、わしのケツの強度はクレーン王子の半分しかないだろう。長年の不摂生不道徳猥褻怠惰な生き方によって痛みに対する耐性も衰えている。「んじゃ、お前自身の責任じゃねーかよっ!」とツっこみたくなる向きもあろうが、それは間違いだ。わしの不摂生不道徳猥褻怠惰な生き方はこの国と社会のせいなのだ。弾けたバブルとリーマンショックのせいなのだ。
ともあれ、ヒビの日以来、ケツよりも心が痛い。